各国の軍ではそれぞれ、現地で活動する隊員向けの食事である「レーション」が用意されていますが、活動の現場は戦場だけに限られず、自然災害や人道支援の場などさまざまです。
どの現場だったとしても隊員はもちろん、その現地にいる民間人用にもレーションが用意されており、災害時に自衛隊が戦闘糧食を民間人に配布する事などは有名ですね。
ロシアには災害時などでに活動をする政府機関「EMERCOM」というものが存在していて、今回はそのEMERCOMのレーションを紹介、実食レビューしてみたいと思います!
ロシアの「EMERCOM」とは?

出典:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E6%B0%91%E9%96%93%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%83%BB%E9%9D%9E%E5%B8%B8%E4%BA%8B%E6%85%8B%E3%83%BB%E8%87%AA%E7%84%B6%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%BE%A9%E6%97%A7%E7%9C%81)
EMERCOMは日本語だと「ロシア民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省」、通称「ロシア非常事態省」と呼ばれる、ロシア国内で災害や非常事態が発生した際、国民の防衛や保護等のさまざまな活動を行うために設立された政府機関です。
アメリカだとFEMAという機関がそれと相当し、日本だと自衛隊がその役割を担ってますね。
自国だけではなく、例えば東日本大震災が発生した際に救助隊を日本に派遣するなどの活動も行っています。
そして、そのEMERCOMにはロシア軍と同様にレーションが用意されており、隊員だけでなく民間人への配布をする事も前提で、自衛隊だと同様の際には戦闘糧食を、アメリカだとHDR(Humanitarian daily ration)というレーションが用意されています。

ロシア非常事態省のレーションを紹介!
ロシア非常事態省のレーションには2つのメニュー存在しており、どちらも3食分の食料と飲料、メイン料理を加熱するための着火剤と簡易ストーブなどで合計の重量は1.8kg、総カロリー4,200kcal以上という構成になっています。

今回レビューするのはメニュー2
当サイトでは過去にロシア軍のレーション「IRP」のレビューを行っていますが、重量やカロリーなどは全く一緒ですね。

今回レビューさせていただくものは2021年製造、賞味期限が2022年のもので、以前レビューしたロシア軍のIRPと同時期に購入したものですが、実際に食べるまではかなり期間が開いてしまいました。

開封し、中身を見ていきましょう!
ロシア非常事態省「EMERCOM」のレーション開封&中身確認

相変わらずめっちゃ大きい
ロシア軍のIRPと同様に上部に取っ手が付いていて下部から開けるタイプの外装になっていて、中には箱が入ってます。

上部の取っ手部分

下部から破って開けます

中には箱が入ってる
保管時、上に物を乗せたりしていたので箱が少し潰れてますが、果たして中身は無事でしょうか?

綺麗に整頓されたままですね。クラッカーも特に割れたりはしていなさそうです。
中身を広げてみましたが、これロシア軍のIRPとほぼ中身が一緒ですね。
最初に結論をお伝えすると、デザートのチョコレートがチョコペースト(?)に替わっていることと、ウェットティッシュのパッケージが異なる以外は全て共通でした。
レビューしたIRPがメニュー1だったので、今回のレーションも1と2の違いはデザートの違いっぽいですね。これだけの違いのためにわざわざメニューを分けている理由は謎ですが。。

通常のレビューであれば中身を紹介する際にカロリー量なども含めて一つ一つ解説してますが、今回は内容が被るので、より詳しく知りたい方は以下より過去のレビューをご覧ください。
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ロシア軍の24時間用レーションを食べてみた!総カロリー4,000kcal!
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肉と豆の煮込み料理
こちらはメイン料理1つ目、肉と豆を煮込んだ料理です。
ビーフシチュー
メイン料理2つ目のビーフシチューです。
カーシャ
メイン料理3つ目、ロシアなどでよく食される蕎麦の実の煮込み料理です。
ソーセージ
サイドメニュー1つ目のソーセージです。

ベジタブルキャビア
サイド2つ目のベジタブルキャビア。
キャビアが食べられない貧困層の方々が、野菜などを煮込んでそれに見立てて作ったのが始まりだとか。
チーズ
サイド3つ目のチーズ。
いかにもプロセスチーズ、という品です。
クラッカー(プレーン)
主食のクラッカー。
一袋8枚入りで4つも入ってます。
全粒粉クラッカー
続いてさらにクラッカー、こちらは全粒粉入り。
8枚入り×2袋です。
アップルジャム
アップルジャムです。
クラッカーに塗って食べる形ですね。
チョコペースト
こちらが前述した、前回のIRPには入っていなかったデザートのチョコペーストです。
パッケージを訳すとチョコとナッツと出てきたので、ヌテラみたいなものでしょうか。
文字が小さすぎて翻訳カメラでうまく訳せませんでしたが、恐らく100gあたり580kcalと書いてあるものの、内容量は読み取れませんでした。

ピーチジュース
続いて飲み物の1つ目、ピーチジュースです。
コーヒー
飲み物2つ目、どの国のレーションでも定番のコーヒー。
紅茶
飲み物3つ目、紅茶。
砂糖
15g入りの砂糖が4つ。
コーヒや紅茶1杯で5gあれば十分なのにこんなに大量に入ってるのは、寒いロシアの地で可能な限りカロリーを摂取できるようにするためと思われますが、とてもじゃないけど1杯に1つ丸々は使えません。
塩
5g入りの塩が2つ。
コーヒークリーマー
2.5g入りのコーヒークリーマーが4つ。
ブラックペッパー
ブラックペッパー1gが1つ。

唐辛子ペースト
唐辛子がベースのペーストです。
ガム
ガム10個入り。
ウェットティッシュ
ウェットティッシュ。
ロシア語が分からなくてパッケージだけを見ると飲み物かな?と思ってしまいます。
アクセサリー類
アクセサリー類の着火剤と簡易ストーブ、スプーン×2、ナプキン×3枚です。
以上が今回のレーションの中身詳細でした!

ここからは朝食、昼食、夕食、おやつとそれぞれ分けて、実食レビューをしていきたいと思います!
朝食
朝食についてはメインにカーシャ、サイドのチーズにクラッカー、飲み物にはコーヒーとピーチジュースをいただきたいと思います!

まずは飲み物から準備していきましょう。
コーヒーからの紅茶に変更。その理油は、、
朝といえばコーヒーですが、若干嫌な予感がします。
というのも袋の上から触ると、やや固まってしまっている部分があるような感触がし、傷んでしまっていないかが心配です。

白くカビてる部分がある
開けてみたところ予感的中しました。
スマホなどの画面だと分かりづらいかもしれませんが、ところどころ白くカビが見えますね。
これまでもっと酷く傷んだレーションのコーヒーも見てきましたが、これだとちょっと飲む分けにはいきません。

2袋目も同様でした
2袋目を開けてみたところ、1袋目ほどではありませんが、やはり同じでした。
残念ながらコーヒーは諦め、紅茶に切り替えようと思います。
この記事を書きながら「本当にカビだったのか?」と疑問に思い調べてみたところ、インスタントコーヒーにカビが発生する事は稀で、白くカビのように見えるのはカフェインが結晶化したもののようです。
風味は失われている事が多いものの、飲んでも問題無いみたいなので、次回からは捨てずに飲みます。

気を取り直して紅茶を淹れていきます。
中身は普通のティーバッグタイプ。

クリーマーと砂糖も投入
砂糖は5gくらいがちょうど良いので、1パックの約1/3を投入。
恐らく時間が経ってしまっているものなので味は薄め、あまり紅茶の香りも感じられません。

とはいえ別に不味いわけでもなく、これはこれで朝には良い飲みものですね。
ピーチジュース
続いて、ピーチジュースを作りたいと思います!
どれくらいの水の量を使えばいいかわからないものの、粉の量はそこそこあるのでジョッキを使わせていただきます。
砂糖の顆粒のような中身となっています。
一般的な顆粒のジュースというより、砂糖にピーチの風味を付けたようなものなので、水に溶けにくいです。
既に過去レビュー時に飲んでいるので知っていましたが、相変わらず味も桃の香り付きの砂糖水という感じで、べた付くような甘さです。

ロシアにはもっと美味しい粉ジュースとかあるだろうに、なぜこれを使っているのかは謎です。
カーシャ
それではメイン料理であるカーシャに移らせていただきます!
前回食べた時は加熱時に焦がしてしまってあまり美味しくいただけなかったので、リベンジです。
まずは簡易ストーブの準備から。

室内なので下にアルミホイールを敷いてます
中に入ってる金属の板状のものを折り曲げてストーブを作ります。

こちらが着火剤
使った事のある方は分かると思いますが、着火剤は魚のような香りがします。
真ん中部分に着火剤を乗せれば準備完了です。あとはマッチで火を点けるだけ。
カーシャを開封。
遠目で見るとひきわり納豆みたいですね。
着火剤に点火。
そしてカーシャを簡易ストーブに乗せて加熱。
前回はこの状態で放置をして焦がしてしまったので、定期的にかき混ぜていきます。
容器の縁は熱くて触れないので、フタを持ちながらであれば安定させてかき混ぜられますよ。
5~10分ほど加熱して良い具合に仕上がりました!
焦げもなく、脂が溶けて全体に絡まって美味しそうですね。
今回はかなり上手く作れました。
蕎麦の実は柔らかく、日本人なら食べ慣れた事のある蕎麦の香りが口の中に広がります。
味付けはシンプル、というかとても質素です。
蕎麦と牛脂の香りにわずかな塩味しか感じられないので、塩と唐辛子ペーストを使いたいと思います。
塩はほんの少しだけ振りかける事でちょうど良い加減になりました。
唐辛子ペースも使いたいところでしたが。。
カピカピに固まってしまい使えませんでした。

クラッカーも一緒に、の予定が。。
次に、カーシャと一緒にクラッカーもいただく予定でしたが、、
なんと油が酸化してしまっていて香りが酷く、とても食べられる状態じゃありませんでした。

食べ物を粗末にするのは大嫌いで心苦しいですが、こちらのクラッカーは諦めます。
チーズ&全粒粉クラッカー
先にお伝えすると、昼食以降に予定していた全粒粉クラッカーもダメになってしまってました。
全粒粉によって酸化した油の香りはやや薄まってますが、無理して食べるほどではありません。
そしてチーズの方ですが、やや膨張しているようにも感じられ、嫌な予感がします。
見た目は特に問題無さそうですね。
匂いはとてもチーズらしい香りですが、前回食べた時はいかにもプロセスチーズという感じであまりチーズっぽい香りは感じられなかったので、ちょっと怪しい気がします。
明らかに傷んでいるような味ではないものの、やや苦味が感じられるのと、食べると若干舌が痺れるような感覚があります。
大丈夫そうな気もしますが、これも無理をして食べるほどではないので今回は諦めさせていただきました。
食べる物が少なくなってしまいましたが、時間をおいて昼食のレビューに移らせていただきます!
お昼
続いての朝ご飯はビーフシチューとソーセージ!
クラッカーが無くなってしまった事で随分シンプルな感じになってしまいました。
ビーフシチュー
朝食のカーシャと同様に、ビーフシチューも簡易ストーブを使って温めていきます。

スープに使った牛肉と、白く固まった脂が目に入ってきますね。
加工された植物油などは固まらないので、自然な、恐らく牛脂かと思われます。

簡易ストーブに乗せて着火。
温まっていくにつれて脂が溶けてきましたね。
脂が溶けて煮立ったら完成です。
以前に食べた時と同様、シンプルな牛肉の味わいが広がります。
塩加減は牛肉の味を邪魔しない程度でほどよく、スープの量が多いので食べているととても温まってきますね。
スープにもしっかり牛肉の旨味が溶け込んでいて、雑味の無い仕上がりです。
ややシンプル過ぎて刺激が無いので、コショウについてはこちらで使うのが正解ですが、前回はビーフシチューに使ったので、今回はそのままでいただきました。

ごちそうさまでした
ソーセージ
続いては缶詰のソーセージです!
脂身があるので熱しても美味しそうですが、基本はこのまま食べるのが正解かと思われます。
味付けは濃くなく、お肉の自然な旨味が味わえる仕上がりです。
柔らかくて、食感はパテに近いですね。

さわやかなハーブ系の香りも広がり、クラッカーと一緒に食べられなかった点が残念です。

おやつ
夕食前に、おやつとして前回は含まれていなかったチョコペーストをいただきます!

変色や脂の分離なども無く、問題無さそうですね。
ヘーゼルナッツの香りが広がる、滑らかで美味しいチョコペーストですね。
ヌテラと比べると甘さは控えめで上品に仕上がってますが、ヘーゼルナッツの香りはヌテラの方がハッキリ感じる事ができます。
本来はクラッカーと一緒に食べるのかもしれませんが、そのまま食べたとしても量が少ないのがとても残念です。

時間を置き、最後の夕食に移らせていただきます!
夕食
夕食はメインの肉と豆の煮込み料理に、サイドとしてベジタブルキャビア、ピーチジュースをいただきたいと思います!
ピーチジュースのレビューは朝食で既にしているので、省略します!
ベジタブルキャビア
まずはサイドのベジタブルキャビアから!
色合いは前回と変わらず、特に傷んだりはしていなさそうですね。
玉ねぎやにんにく、パプリカの香りが効いているペースト状の食べ物で、これも本来であればクラッカーと一緒に食べるのが正解ですが、そのままでも少しスープに近いような感覚で食べられます。
少しスパイシーさも感じますが、辛さはありません。
人参がベースの粗越しの野菜ジュースに塩を少し加え、香辛料の旨味が混ざったイメージでしょうか。
このまま食べても美味しいですが、若干クセがあるのでクラッカーと一緒に食べられなかったのは残念です。
肉と豆の煮込み料理
最後のメイン、肉と豆の煮込み料理をいただきます!
見た目は分かりやすく、肉と豆ですね(笑)
朝食、昼食と同様に簡易ストーブで加熱していきます。
下の方が焦げないように、湯気が立ってきたら少しずつかき混ぜながら加熱します。

脂などが溶けてスープ状になれば完成。
コショウは最初から使います。
どのメインでも共通ですが、余計な味付けがされていなく、素材の自然な味を楽しめるのがロシアのレーションにおける特徴ですね。
牛肉のシンプルな旨味が広がる、ビーフシチューと似た味がベースとなっています。
豆が多く入ってるので、食べ応えは3食の中でも一番ありますね。
もう少しハーブなどの香りが欲しいところですが、コショウによって味に奥行が加わってくれました。

まとめ
以上、今回はロシア非常事態省「EMERCOM」のレーションの紹介とレビューでした!
レビュー内であまり触れなかったものについては、過去に投稿したIRPのレビューにてご確認ください。
中身についてはほぼ同じでしたが、今回このレーションを食べて一つ勉強になったのは、いくら長期間の保存が可能なレーションだったとしても、賞味期限を大幅に過ぎると中身によっては食べられなくなってしまう事でした。
米軍MREのように真空パックされているクラッカーなどは10年超たってもほぼ変わらない味ですが、今回のクラッカーのように通常の包装がされているものは要注意です。

現在手元に賞味期限が1年ほど過ぎたフランス軍のレーションがいくつかあるので、早めに食べてレビューしなければなと思いました。
なにはともあれ、今回のレビューも楽しんでいただけたのであれば幸いです!